出口治明氏の教養の程度

 出口治明とはライフネット生命会長だが、最近読書家としても有名となり、いくつもの本を書き、テレビ番組等インタビューで読むことの楽しさについて発言している。トップビジネスマンとしてはかなりの読書家といえる。

日経の日曜読書欄でよく経営者の読む本などが紹介されるが、その選定本によって、この経営者はどの程度のものか探ることができる。つまり、偉そうにしていても、こんな程度の本しか読んでいないのか、と。経営者側もそれを見越して、文句の言われない古典の書を感銘を受けた本などと紹介している。ホントかもしれないし誤魔化しかもしれない。

就活の学生が面接で、あなたの尊敬する人物はと聞かれて、両親と答えるようなものだ。面接官からすれば、あんたの親なんて知らねえよということだが、それが就活学生からすれば、知らないから文句つけられねえだろうというのが目的なんだからしようがない。経営者の古典本選定も同じようなもの。古典の本はそうそう読まれていないから、ボロがでないというものだ。

 さて、出口治明氏の読書量と広さはハンパないようだ。ネットインタビューで出口氏が若手サラリーマンにビジネス書として薦めるのは、中国の古典『貞観政要』と『宋名臣言行録』。そして歴史を読む上で、必読の2冊として、ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』とイマニュエル・ウォーラーステイン『近代世界システム』を挙げる。また、感銘を受けた本として、ユルスナール『ハドリアヌス帝の回想』を挙げている。

  私も『貞観政要』や『想像の共同体』は知ってはいるけど、読了まではしていない。ましてや、ウォーラーステイン『近代世界システム』やユルスナール『ハドリアヌス帝の回想』って何、といったところか。出口氏は、ウォーラーステイン『近代世界システム』を30代で読んで感銘を受けたというから余程優秀なんだろう。

 そういう経験を生かして、読書家としての本をいくつも書いているようだ。「仕事に効く教養としての世界史」とか「本の「使い方」1万冊を血肉にした方法」等。といっても私はそれらを1冊も読んでいないけど。最近では「人生を面白くする 本物の教養」という本を幻冬舎新書から出していて、売れ行きがいいらしい。読書週間だからか、昨日の読売新聞では「本物の教養」の大きな広告が出ていたっけ。

 ということで、早速書店に立ち読みに言った。(著者には申し訳ないが、この歳で買って読む本ではない。若いビジネスマン向けだろうから)

 ネットでの書評を紹介する。
「…本書のなかで著者は、教養とは何か、どうすれば身につくのかを、実例を交えながら説明しています。シェイクスピアを読んでいたことで仕事がもらえたという著者の体験、世界の相場に疎かった幕府が、金を大量に流出させた話(貨幣博物館に行くと、深刻さがよくわかります)、日本財団のCMのおかしさを指摘した連合王国の友人の話など、エピソードを交えながら、教養があるとどんなに得をするか、ないとどんなに損をするかを語っており、教養の大切さを痛感させられます。…」

「著者が身をもって体得した教養の原理原則を平易な見解で展開しています。項目ごとの見解は賛否両論ありそうですが、自分の頭で改めて考える良い機会になり、今後広く関心を持ち考えることを習慣にしたいと感じました。
著者曰く教養とは、「人生におけるワクワクすること、面白いことや、楽しいことを増やすためのツール」で、自分の頭で考えられ、腑に落ちる感覚が大切と説いています。
以下私が注目した項目です。
・学生が勉強しないのは会社がそれを求めないから(思わず納得しました)
・世界標準では日本の企業幹部は圧倒的に低学歴(初めて知りました)
・政府を批判することは市民の重要な権利(当事者意識が重要)
・新しい分野を勉強するときは分厚い本から入る(次回実践したいです)
・世代間の不公平をなくす方法はあるのか?(真剣に考えたいテーマです)
・「幹」と「枝」をごっちゃにしているTPPをめぐる議論(TPP以外でも気を付けたいです)
・あくまでも「歴史は一つ」である(初めて知った解釈です)
・地球温暖化は人類の英知が問われる課題(京都議定書を詳しく知りたくなりました)」
(引用終り)

 好意的な感想が多いが、若いビジネスマン向けに書いたからから、なるほどと思う人も多いのだろう。しかし、私の感想は全く反対。こんな本、書かない方がよかったのではと思ったのであった。だって「本物の教養」なんて大げさな書名を付けて恥ずかしく思わなかったのか。いくら書名の命名権は出版社にあるにしてもね。

 というのは、これまで古典を読んできた、そして古典を大いに読もうと進めている割に、この本に出口氏の「教養」が全く感じられないんだ。となるとウォーラーステイン『近代世界システム』やユルスナール『ハドリアヌス帝の回想』に感銘したというのも、ホントかねと疑いたくもなってくるんだ。
 
本の冒頭で、もう「出羽守」は止めようといってた。西洋では、〇〇では…という「出羽守」だ。全くその通り、だと思ったら、その後の展開は次から次へと「出羽守」のオンパレード。欧米のエリートは素晴らしいが、日本の企業幹部は教養がない。中国の官僚は素晴らしいが、日本はだめ。民主主義の教育は、スウェーデンでは…、日本はだめ。「出羽守」は止めようじゃなかったのかねえ。出口さんに「本物の教養」があったなら、中国の官僚は素晴らしいが、日本はだめ、ではなくて、中国の官僚はあんなに頭がいいのに、なぜ国としてあんなにデタラメになってしまうことを問いかけるのが「本物の教養」ではないんですか。

 その後、日本の社会や政治、国際政治等についてコメントを続けていくが、日本をダメにした終身雇用等の日本的経営批判、消費税増税賛成、中給付を受けたければ、税等の中負担も等々、領土紛争はバカバカしい、中国とは仲良くしようとか。
 こんな程度の評論は、左翼新聞に書いてあることそのまま。知恵も深みも全く感じられない。1万冊の教養はどこにいったのか。

 これらから感じるのは、出口氏は国家観のないグローバリストで、新自由主義者らしき人物であるということだ。経済・財政については、一定見もない素人ではないか。これでも読書家といえるのか。ちょっと頑張って本を読めば、財政健全化論のおかしさに気付くはず。そして、最後に「地球温暖化は人類の英知が問われる課題」として、地球温暖化批判論は陰謀論と切り捨てる。といことは、地球温暖化批判論の書物を一冊も読んでいないか、読んでも理解力がない、あるいは偏見が先走って理解できなかったことの証明じゃなかろうか。

 出口氏に「本物の教養」が全くないことがばれてしまった。それよりも悲惨なことは、古典なんかいくら読んでも、週3~4冊読んでも1万冊読んでも、バカはバカであるということが証明されたということだ。

 出口治明氏に教養が感じられないのは、発する言葉に深さが感じられないこと、考えさせるヒントを出してくれないこと、ただただ「浅い」のだ。しかも日本の歴史や文化に言及がされない、日本人のくせに日本のことを誇りに思っていないようなのだ。こんなおっさん、もう私は読書家です、なんて言わない方が身のためだ。老醜をさらしてはみっともないだけだ。

 といっても私は「古典」を否定するわけじゃない。「古典」を読んだらエリートになれる、と勘違いしないようにと言いたいだけだ。若いビジネスマンはこんな低レベルの本を読む暇があったなら、長谷川三千子先生の本を読んだほうが余程教養が身に付くというものだ。

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