日本のマスコミが信用できない一つの例、ギリシャ国民投票

 自民党の若手が「マスコミを懲らしめるには…」と怒るのは、マスコミが嘘つきだからだ。だからといって、自民党議員がそんなことを言えば叩かれるのは火を見るより明らか。なすべきことは、「粛々と」(上から目線でなく)マスコミの嘘つき、捏造、偏向、イメージ操作等々の事実を提示して、その事実をもって争えばいいのだ。そんなことも分からない自民党の若手とは、レベルが低すぎる。

 ギリシャ破綻報道は、「日本も破綻するぅー」というイメージ操作に都合よく使われるのだが、イメージ操作は、少しずつ少しずつ小出しにしてくるから注意が必要だ。
 今回取り上げるのは、ギリシャ国民投票の事前予想だ。ほとんどのマスコミは、反対、賛成が拮抗していると伝えていた。つまり、緊縮政策に多くのギリシャ国民は賛成していると。しかし、大方の予想を裏切って、これが全く外れてしまったわけだが、経済評論家廣宮孝信氏に言わせると、現地のネット世論は、圧倒的に「NO」という予想を出していたとのこと。ギリシャのマスコミも日本のマスコミも緊縮賛成のキャンペーンを張っていた訳だが、真実を伝えようという努力は全くしなかった。ネット世論に負けるべくして負けたわけである。
 そして、ギリシャ大手新聞AVGI紙の事前の世論調査の内訳が興味深い。
年齢別に賛否の比率をみると、
 Age  No (%) Yes (%)  
18-25歳   71   20
25-34    59  26
35-44    34  53
45-54    48  36
55-64    44  47
65 歳以上 26   56

職業別にみると、
 Job   No (%) Yes (%)  
民間部門  54    34
自営業者  39    50
公的部門   58    31
失業者    51   26
学  生   83    13
年金受給者 31    55
主  婦   42   42


 これを見ると、若年層、学生は「NO」が圧倒的だったのに対し、高齢者、年金受給者が「YES」が優勢だったことがわかる
 先日の大阪都構想住民投票とは趣が異なる。あのときは、老人が都構想を否定し、既得権者の老人は現状維持を選んだといわれてが、ギリシャの既得権者としての老人や年金受給者は、緊縮財政施策を受け入れるつまり年金等が更に切り下げになるほうを選んでいる。自分たちの利益だけを望んでいては国が危ういとでもおもったのだろうか。よくわからないが、そんな単純なことでもないだろう。

 むしろ、若年層、学生は「NO」が圧倒的だったことに注目すべきだろう。恐らく日本ならおバカで日和見な若者たちはマスコミの宣伝にイチコロで緊縮受け入れを選んでいただろうが、ギリシャの若者は、大半が失業者あるいは将来に希望が持てない層となっており、この事態がなぜ生じたのか、よく考えた結果ではないかと思われる。
 つまり、ギリシャの破綻は一般に言われるようなお役人天国になりすぎたから(当然それもあるが)というより、EUという仕組みがもたらしたものだ。だからその理不尽さを否定したのだろう。つまり、EUという、国家の独立を否定し、自立的な財政政策、通貨政策を行うことができず、ドイツを盟主とする力のある勢力の言いなりになっていることへの反発だろう。確かに、EUへの加盟はギリシャの判断だったかもしれないが、EUに加盟してもいいことはろくになかったことが、時を経てようやくわかったのだ。今ようやくギリシャのナショナリズムに目覚めた。特に若年、学生。

 チプラス首相の「国民投票の結果は民主主義の勝利だ」という意味は、EUという(ドイツ)帝国(エマニュエル・トッドのいうところの)に対して突きつけた「NO」だということだろう。

 そして、そういうギリシャの複雑な状況を全く解き明かすことをしようとしない日本のマスコミは、ギリシャの生活不安を煽ることで、日本の財政破綻への脅しとしてのイメージ作りに勤(いそ)しんでいる。こんなマスコミは要らない。だから、「マスコミを懲らしめるには…」というのは十分理解できるのだ。しかし、戦術は洗練されないとね。

(参考)
「ニュースフィア」より。
◆押し付けの緊縮策こそ問題
 このような状況のもと、ビジネス・インサイダー誌のヘンリー・ブロジェット編集長は、皆が悪者探しをしていると指摘。多くがギリシャのチプラス首相を無責任だと責めているが、経済学者のポール・クルーグマン氏は、これに異議を唱えていると述べている。
クルーグマン氏は、過去7年間、欧州はギリシャ経済の首を絞めてきたと主張。欧州が金を貸すたびに、ギリシャは歳出カットで応えており、緊縮財政こそが、ギリシャ経済にダメージを与えてきたと説明する。同氏は、危機に陥るたびに譲歩したことで、ギリシャは不況に苦しむ経済上の奴隷国になり果てたとし、ギリシャが持続可能な方法で負債を減らして現状から脱却することを欧州が認めないならば、ギリシャに残された道は債務不履行とEU離脱しかないと述べる(ビジネス・インサイダー誌)。
 ブロジェット氏は、支出は各国政府がそれぞれの裁量で行うが、借り入れは単一通貨で行う現在のユーロの仕組みは、豊かな国が貧しい国を助成しない限りは、長期的にうまくいくはずはないと指摘。欧州の「中心」の国々は、この考え方を受け入れそうもないため、ギリシャや他の弱小国は、ユーロ圏を離れた方がおそらく幸せなのではないか、と述べている。

◆富に負けた民主主義
 英ガーディアン紙のコラムニスト、ゾーイ・ウィリアムズ氏も、ユーロのあり方に批判的だ。同氏は、国民投票の選択肢は、終わりなき緊縮か今すぐの大混乱だとし、どちらもギリシャ国民は望んでいないと説明。失業率は25%に達し、若者に至っては、ほぼ半分が職を持たず、40%の子供の生活レベルが貧困ラインを割っている現状では、EUがギリシャに求める緊縮案では、何も変わらないと主張する。
 同氏は、単一通貨の導入で、自分たちの通貨のコントロールを失ってしまったとたんに、一国の政府は、その力を制限されてしまうと指摘。結局、強者が支配するのだと述べ、最も富めるドイツのやり方に従うことになると述べる。通貨管理は政治とは切り離すというユーロ創設時の神話は崩れ、民主主義はそれとともに降ろされたのだと同氏は主張。ギリシャはわれわれすべての力を弱める、間違った考えを維持するために犠牲になっていると述べている。

◆ユーロ自体が悪?
 英テレグラフ紙で執筆する政治コメンテーターのイアン・マーティン氏は、ギリシャのチプラス首相は、EU加盟国との慎重な話し合いを選ばず国民投票実施を決めたことで、欧州の政治家や官僚たちからは完全に狂っていると思われている、と述べる。しかし、狂っているのはチプラス首相ではなく、ユーロを作った側だと同氏は主張。彼らこそが、必要なセーフガードなしに、広大な大陸に通貨同盟を作ることで、政治的な夢と虚栄心が、経済感覚や文化、国の違いに打ち勝つと信じていたと断じる。
 同氏は、ユーロ圏からギリシャが去り多大な影響が出れば、ユーロのエリートたちは、彼らのアプローチが機能していないことに、ようやく気づくかもしれないと述べている。

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